第二次世界大戦の戦前から戦中にかけて活躍した戦艦「陸奥」の鉄です。
1970年ごろ、旧大蔵省と深田サルベージが払い下げ契約を締結。同社の所有物として海中から引き揚げられ、鉄屑として売却されました。
鍛刀: 満足弘次 刀匠
彫刻: 片山重恒 装剣金工師
研磨: 柏木良 研師
注文: 堀江仁貴
後援: 駆逐艦菊月会
管理: 青海波事務局 (一般財団法人群青財団)
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陸奥鉄のブロックから10kgを欠き取り、玉鋼と同量から1割刻み(5:5, 6:4, 7:3, 8:2, 9:1)で減らして積み沸かしましたがなかなか鍛着せず、最後の「玉鋼9割に対し陸奥鉄を1割混ぜる」比率でようやく鍛刀に成功しました。
満足刀匠が行った火花試験(JIS G 0566)では、火花の形状から、使用した陸奥鉄はニッケルNiとクロムCrの含有量が高いと推測でき、非常に硬く、粘り、錆びにくい部位が現れると予想され、結果はその予想通りとなりました。
また、熱を伝えやすく、焼き入れ性がよくなりすぎる(刃文が形成されにくい)とも予想できるため、片山装剣金工師によれば、もし陸奥鉄の割合が1割以上で鍛着したとしても、現行の法律では日本刀とは認められにくいだろうとのことです。
そのほか、青海波には「秋刀魚を彷彿とさせる」輝きがあると形容されるとおり、玉鋼だけで作られた刀より刀身全体がやや青みがかっていることも特徴の一つです。
これは鉄のほかにも金属元素が微量ながら含まれているためと考えられていますが、具体的にどの元素が発色に影響しているのかは不明です。
参照: 装甲鋼板データ - 大砲と装甲の研究 - Internet Archive

太刀 銘 備前國長舩住弘次作 柳匠堂重恒彫
以戦艦陸奥防禦鋼板鍛 令和元年牡丹華 (号 青海波) 附 波浪図銀地一重鎺
〈佩表〉
備前國長舩住弘次作
柳匠堂重恒彫
〈佩裏〉
以戦艦陸奥防禦鋼板鍛
令和元年牡丹華
「為萬世開太平」とあり、「萬世の為に太平を開く」と読みます。
『近思録』に典拠を持つ玉音放送の一節です。
「将来の為に平和への道を開く」が、およその意味です。
有名な「堪え難きを堪え忍び難きを忍び」の後に、「以って萬世の為に太平を開かんと欲す」として続きます。

「太平の世がいつまでも続くように」という願いが込められているとされる青海波文様。
陸奥鉄と同じ海由来のものであることと、刀身の碑文と同じ平和への願いから、「青海波」の号を採りました。
「青海波」の姿は元帥刀に由来しています。
一般的な鋒両刃造り(小烏丸造り)との違いは、鋒が鋭く、鎬が棟側に寄っているところです。
佩裏には菊の御紋章の代わりに海軍の「桜に錨」が彫られています(元帥刀の佩裏は陰十六八重表菊の金象嵌)。

もともと日本海軍では「海が荒れる」ことを忌み嫌っていたとされ、佩用される刀の刃文は「波平らけく」との験担ぎから直刃などの穏やかなものが好まれていたようです。
その傾向は御賜短剣や三笠刀、元帥刀など、作刀段階から日本海軍が密接に関与する刀に多く見ることができ、青海波もそれに倣っています。
加納夏雄の作、水龍剣の鎺を参考にしています。
意匠は波浪図で、直刃の刀身とは静と動の対比になっており、また佩裏の彫刻(桜に錨)と揃うことで情景を完成させる意味もあります。
水龍剣のものは、金無垢で華やかな印象ですが、青海波のそれは、落ち着いた印象にするために銀無垢を採用しています。
刀身の柄に被われる部分です。ここに銘を切ります。
太刀は刃を下にして腰から吊り下げて佩きます。このとき、体に付くほうが佩裏、体の外側になるのが佩表です。
七十二候の第18候で、二十四節気「穀雨」の末候です。2019年5月1日から始まった令和の最初の候でもあり、令和元年の牡丹華は5月1日から5日までです。
銘とは、茎に刻まれている文字を言い、号とは、銘に関係なくついた愛称を言います。また、碑文とは、刀身の鞘に被われる部分に刻まれている文字を言います。
刀身の手元の部分に嵌める金具です。刀身を鞘に固定する役目をし、かつ鞘の中で刀身を浮かせたまま支えておく機能があります。
ホオノキの柄と鞘のみで仕上げられた外装を白鞘と言います。白木のままのため、鞘の内部で湿度が調整され、刀身が錆びにくいとされています。
鍛錬には約10kgの陸奥鉄が使用されました。しかし、最終的に刀身として形になったのは、そのうちの1割未満です。
令和2年現在、白鞘のみです。
今のところありません。
鍛刀代、金工代、研磨代、白鞘代で合計300万円です。ただし、ブロック切断費など、陸奥鉄の欠き取りにはさらに別途費用が発生しています。
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刀剣画報 (2022年4月6日発売)
菊月会史 (非売品)
特化Vコラボナイト
├ 本配信 (2025年8月24日配信)
├ 振り返り配信 (2025年8月26日配信)
└ note (2025年8月31日公開)
2021年度現代刀職展 (2021年7月17日から2021年9月20日まで)
完成報告会 (2022年5月5日)放火予告により中止
備前長船刀剣博物館 (2022年7月5日から2022年8月31日まで)
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